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2011年(平成23年度)から小学校、2012年(平成24年度)から中学校において、
新学習指導要領が施行されます。
これにより、今年度より“移行措置”が実施されています。
移行措置とは、就学途中で学習指導要領が変更される児童生徒に対して、
新学習指導要領に移行したときに、未履修の学習項目があったり、
学習する必要のない学習項目や重複して履修する学習項目があったりすることを
防ぐために行われます。
したがって、学習項目の削除や追加、学年間の移動などがある場合には、必ず行われます。
前回の改訂では、学習内容の削除が主なものだったため、余った授業時間を
「総合的な学習の時間」に振り替えることで、比較的簡単に行えました。
ところが、今回の改訂では、理数科で大幅な見直しがあったため、
年ごとに複雑な移行措置が行われることになります。
文部科学省は、今回の改訂で「確かな学力」の確立にむけて、
主要教科の授業時間数が約1割増加しています。
また、理数教育の充実ということで、授業時間数の増加のみでなく、
学習内容も大幅に増えています。(結局、2002年以前に戻るということです)
また、教科とは位置づけられませんが、小学校5,6年生に週1コマ英語が必修となります。
移行措置についても、前倒しで新課程の内容が加わってきます。
その結果、この春からスタートした移行措置では、
学校現場に予想以上の影響を及ぼしているようです。
ある小学校では、週6時間授業の日を1日増やしたり、
遠足や健康診断など様々な年中行事を減らすことによって
算数や理科などでプラスされる内容を消化するための時間数を捻出しているようです。
週5日制にともない、学習内容を3割削減した学習指導要領による
「ゆとり教育」がもたらした学力低下の実態については、とりわけ
理数系学力の低下について「分数ができない大学生」という言葉が
象徴するように枚挙にいとまがありません。
しかし、理数系の学力の充実を大きな目標に掲げた新学習指導要領によって、
3割削減内容が戻ってくるのです。
この移行措置期間に「今までの遅れを取り戻す」と言うことです。
そのKey Wordは『計算力』 です。例えば、
@ 【小4】12×231=‥?(国立教育政策研究所調査)。。。正答率46.7%
その原因は「3けた×2けた」のかけ算が発展的な内容になっているためです。
(現行教科書ではこのような問題は電卓マークがついています)
当初、文部科学省の「2けた×2けた」ができれば「3けた×2けた」も自然にできるという
コメントがありましたが、実際は小4の半数の子どもたちが「3けた×2けた」の
筆算ができないというのが現実なのです。
問題は、単に筆算ができないということのみならず「3けた×2けた」の計算の答えが
「3けた」になっているのにおかしいと思わない、
つまり量的感覚の著しく欠如した生徒が増えているということなのです。
今後は、小3から「3けた×2けた」のかけ算が戻ることによって、
それ以降の学年の計算体系が昔のように戻って行きます。
A 【小6】3+2×4=20‥?(国立教育政策研究所調査)。。。正答率58.1%
小4で学習する「計算のきまり」が身に付いているかどうかをみる
極めてシンプルな問題です。
同一問題の正答率は、小4が76.3%、小5が66.0%と学年が上がるにつれて
正答率が下がるという奇妙な現象が起こっています。
これは現行の学習指導要領が学習内容をあまりに厳選しすぎたため、
一度学習した内容を繰り返して学習する機会がないことを物語っています。
今回の学習指導要領では「振り返り学習」の必要性を明記しています。
B 【小6】620冊の本の40%の冊数は‥?(全国学力・学習状況調査)。。。正答率55.1%
ごく基本的な問題だけに正答率の低さが目立ちます。
その原因は@と同じで、小数のかけ算においても桁数に制限があり、
筆算が十分に行われていないことです。
「百分率」という学習内容でありながら、実際に筆算で行える範囲は
「1/10の位」までで、子どもたちは百分率の筆算計算(1/100の位の計算)を
十分に行っていないのです。
また、このように「比」や「割合」を用いた基本的な計算ができていない、
すなわちその意味がわかっていない事実は、中学数学へと連結する上で
極めて大きな問題です。
なぜなら文字式、方程式、関数など、いずれもが「計算力」とともに
「比」や「割合」の概念を活用して表現することが基本となっているからです。
今後、小学算数の補強すべき内容としては、 「計算力」とともに
「比」と「割合」は、移行期間の指導及び新学習指導要領の重要テーマとなります。
現行の教科書では、筆算ではなく電卓を用いてもよいという意味の
「電卓マーク」が問題ごとに表記されています。
学校現場では、教える先生の判断により、筆算をさせたり電卓を使ったり
という運用になっていますが、教科書の影響力は思いのほか強く、
実質的には「電卓マーク」が入っている問題をあえて筆算させるケースは少ないようです。
移行期間中は現行の教科書にプラスして移行措置別冊を使用するため、
教科書中の「電卓マーク」は消えませんが、
2011年度から使用される新教科書では原則として「電卓マーク」は消えることになります。
やはり『算数・数学の基本は計算力』です。